コミュニティの住民とのミーティング

 1年半ほど前に始まった、コミュニティ排水処理のプロジェクトを続けているのですが、その中でコミュニティの住民との会合が、重要な仕事というか、イベントというか、になっています。
今月は、中部ジャワ州の北岸沿いのプカロンガン市のパンジャン・ウェタンというコミュニティと、同じくテガール市のスレロックというコミュニティで会合がありました。みなさん、昼間は働いているので、会合は必然的に夜になります。

 パンジャン・ウェタンのほうは、事前調査の結果、トイレのない家庭も多く、開渠になっている排水溝も汚いので、排水処理システムを設置する必然性が高いと思われたため、つくってみてはいかがでしょうか、という提案をする会合です。夜の8時に開始で、ホテルを7時半に出ることになっていたのですが、うとうとしているうちに、私としてはめずらしく寝過ごしたのです。少し慣れてきて緊張しなくなったのか、などと思いながら、いそいそと現場に向かいました。着いたのは時間ギリギリでしたが、みなさんボチボチと集まり始めたところで、準備をしているうちに人が集まって、結果的にはちょうどいい感じでした。始めに、これまでの経緯や、排水処理システムを設置するとこういういいことがありますよ、と説明をして、意見を聞きます。最大の難関は、各家庭から汚水枡へのつなぎこみ費用や、電気代等の運転経費については、住民に自己負担を求めるのですが、それが受け入れられるかどうかです。この日は、住民の方に意見を求めると、真っ先に、(現状では)セプティック・タンク(腐敗槽、主にトイレ排水を処理する簡素な処理槽)から汚水があふれてくることがあり迷惑している、このプロジェクトはとてもいいことだ、私は大賛成と口火を切る人がいて、次に発言した人も、これはいいことだという意見。そのへんでだいたい流れが決まりました。家庭からのつなぎこみ費用、約40万ルビア(約4000円)が負担だという人もいるのですが、無利子で貸し付けて1〜2年で返済してもらうシステムも準備しているというと、それでOKになりました。運転経費も、このコミュニティの場合、一家庭一日当たり5円くらい集めることにはなるのですが、問題ないとのことで、あっさりとGOサインが出ました。コミュニティによっては、4,5回ほども会合を繰り返して、すったもんだのあげく、この自己負担の問題でダメになるケースも少なからずあるのですが、うまく行く時は、このようにあっけなく進むのです。

 一方、テガール市のスレロックのほうは、既に合意を得て処理システムを建設中で、処理設備はPUSTEKLIM(排水処理適正技術センター、APEXとディアン・デサ財団で運営)で、管渠はテガール市で、と分担して建設しているのですが、その管渠部分について住民から苦情が多々寄せられていて、その解決・調停のためのミーティングです。管渠部分も設計はPUSTEKLIMで行ったのですが、工事を進める中で、管渠工事を請け負った業者が大幅に変更してつくっています。会合が始まって、住民に発言を求めると、汚水枡でヒビが入っているところがある、汚水枡が浅すぎて自分の家からは流せないのではないかと心配である、汚水枡のフタが割れているところがある、工事の時に舗装プロックが壊れてそのままになっている、埋戻しがきちんとされていない、掘削した土が無造作に排水溝に捨てられ、汚水があふれている…など、不満をぶちまける人続出で、一時はどうなることかと思いました。業者は、悪い人ではないのですが、要はやることが荒っぽく、またコミュニケートがへたな人のようです。実際に現場も見ながら話を聞いているうちに、住民側も、一度相手を疑い始めると、感情が先に走って必要以上に問題を深刻に思い込んでいるところがあるのではないかと思えてきました。APEXとしては、今回は住民と業者の間をとりもつ立場なのですが、考えてみると、壊れたところは直し、不都合なところは改め、とひとつひとつ手を打っていけばいいだけのことで、それを確認していくと、何ということはなく話は収まりました。非常に対立的になりやすい状況なのですが、憎み合ったり、こじれたりということはなく、最後はみなさんニコニコと握手をして別れるのがおもしろく、結局さっきのは一種のスポーツだったのか、などと思いつつ、その日の会合を終えました。

 このようなミーティングは、本来は安らぎの時間であるべき夜の時間帯に出かけなければならないキツさはあるのですが、現場で住民の人たちと直に、本音でわたりあえる機会、そのリアリティのようなものに、何か魅かれるものがあります。一回、一回、やってみないと何が出てくるかわからないのですが、これからも、そのどこか不思議な感じのする空間・時間に入っていきたいと思います。


カロンガン市パンジャン・ウェタンでの住民とのミーティング