アンダラス大学での特別講義

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アンダラス大学での講義

先の1月にインドネシア大学と共催したセミナーの余波で、今週、西スマトラ州パダンのアンダラス大学で特別講義をさせてもらいました。1月のセミナーに参加された、ファジャール・ゲンビラさんという講師の方が招待してくれたものです。

 

講義は、2021年4月6日の、現地時間午前9時から11時まで、オンラインで開催されました。アンダラス大学の学生40~50名くらいを相手にお話しするようなイメージで依頼を受けたのですが、思っていたよりずっと規模が大きく、参加者225名で、学外からも、スマトラ島内のジャンビ大学や北スマトラ大学、同島のジャンビ州西スマトラ州の州政府や県政府、ジャカルタ中央政府、バンドゥンの国立工科大学などからも参加がありました。

 

お話ししたのは、1月のセミナーと同様、〈持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク〉をテーマとするものでしたが、今回は、その時よりも時間的余裕があったので、フレームワークの背景となる考え方などもより詳しく触れ、実例としても、排水処理だけでなく、バイオマスエネルギーも加えた、フルバージョンで話させてもらいまた。講義はインドネシア語で行いました。

 

youtu.be

 

 話終えて、質疑の時間に入りましたが、そのやり方がユニークで、質問の中で、これは的を得た良い質問、と思われるもの5件を講師が選び、その5件の質問者に賞品が出るというもの。そのためかどうかわかりませんが、とにかくたくさん質問がありました。

 

大事な点をついていると思われたのは、持続可能性の観点から見て適正な技術選択と、経済的な実行可能性との折り合いをどうつけるかという質問です。それらが両立する技術も少なくないのですが、持続可能な選択と考えられるのに、現状の経済システムの中では商業的には成り立ちにくい場合も多いと思われます。それについては、例えば、もし競合する技術が安くても化石燃料浪費型のものであるなら炭素税をかける等の政策的介入をする、あるいは、フェアなプロセスでつくられた製品なら少し高くともそちらを選ぶといった人々の意識も大事、といった返事をしました。インドネシアは広大で、地域によって文化も社会経済的条件も異なるが、そこはどうなのか、という質問もあり、それはまさに、それぞれの現場の条件に合わせた選択をするのが適正な技術選択の真骨頂なので、そのように答えました。技術選択というのは、道具(またはハードウェア)の選択のことなのか、もっと広い社会的文脈での選択のことなのか、という聞き方をする人もあり、それはもちろんハードウェアだけの問題ではなく、広い社会的文脈の中のとらえ方であり、ハードウェアもその中に位置づく、住民が参加しやすいことが大事である、と返事しました。

 

やはり技術的な質問も多く、回転円板の効率や、回転円板による硝化脱窒について、接触体の素材、回転円板での微細藻類の利用、バイオマスのガス化で副生するチャーの農業への利用、回転円板とバイオマスガス化の組み合わせなどについて聞かれ、それぞれ答えました。

 

質問の内容からも、とてもよく話を聞いてくれ、考えてくれたことがわかります。これからの世界に必要となる技術を考えて、取り組んでいってもらう手がかりになったとすればうれしいです。

 

20年ぶりのバレンタインデー

2001年の10月以来、毎月インドネシアへ出かけては帰ってくるパターンで、ずっと過ごしていました。おおよそ月の初めのほうと終わりのほうは日本にいて、あとはインドネシアなので、この20年間、バンタインデーに日本にいたことがなかったのです。それが、去年の4月から、コロナ禍で出かけられなくなり、今日のバレンタインデーは、実に20年ぶりに日本にいました。そうしたら、うちの奥さんが、チョコレート風のお菓子をつくってくれました。おおよそ、うちの奥さんのつくるものは、見かけはあまりよくないのですが、味はまあまあなのです。このお菓子も、どういうものをつくろうとしたのかよくわからない感じで、中からトロリとクリームが出てくるようなことをいっていましたが、それも構想倒れになっています。見た目は何となくさえないですが、上品な甘さで、それなりにおいしかったです。コロナ禍のおかげで、こういういいこともありました。

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チョコレート風のお菓子

 

インドネシアの国際セミナーを終えて

 

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国際セミナーのパネリスト・司会・スタッフ


2021年1月27日(水)午後1時から午後4時(日本時間:午後3時~午後6時)に、国際セミナー「インドネシアのオルターナティブな開発のための適正な技術選択-持続可能なポストパンデミック社会に向けて」が、APEXとインドネシア大学環境科学研究所の共催によりオンラインで開催されました。Zoom会議に746名、YouTubeのライブ視聴で1,150名、合わせて1,896名が参加する、たいへん規模の大きい会議となりました。

 

 今日、多くの「開発途上国」は、近代化を進め、 経済成長をはかって、「先進国」に近づいていくことを目指していると思われます。しかし、今日の世界を持続不可能なものにしているのは、まさにこれまでの 「先進国」の発展のあり方に他なりませんから、「先進国」は、これまでの発展のあり方と技術体系を大きく転換していかなければならず、「開発途上国」は、 これまでの「先進国」の発展パターンとは異なる、持続可能な発展をなしとげていくことが切に望まれます。この国際セミナーは、かねてから提言しています〈持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク〉をひとつの手がかりとして、 これまでの近代的発展・開発への追随や、その単純な延長とは異なる、オルターナティブ(代替的)な発展・開発についての、国際的・マルチセクター的な対話を始めることをめざして開催されたものです。

 

 はじめに、私(APEX代表理事、田中)から、「持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワークインドネシアでの経験から」というタイトルで講演させてもらいました。これまでの人類の歴史において、人口や経済が増大・成長期から安定期に移行する時期に、きわめて重要な文化的・精神的な革新が生じてきましたが、1960年代後半に世界の人口増加率が鋭角的に減少に転じ、同じ時期に、近代科学技術批判が族生したことに注目しました。それが、今後本格化する、人類史的にも重要な革新の先駆となっているとも思えるからです。適正技術運動も、その近代科学技術批判の流れの中に位置づけることができますが、その運動は、およそ80年代後半から、勢いを失います。その要因を解析する中から、〈持続可能な開発のための適正な技術選択に関する包括的フレームワーク〉が策定されました。このフレームワークでは、今日の世界は、貧困と格差、環境と資源、人間・労働疎外の三つの問題がからみあう中で持続不可能性なものになっているととらえ、それらの問題が生じてくる根本的要因を、資本主義と近代科学技術が車の両輪となって爆発的に発展してきた近代産業社会の構造そのものに求めています。そのような考え方と、それらの問題を連関的に解決していくための技術選択のあり方をまとめた包括的フレームワークの10の原則を、逐次説明していきました。さらに、それらの実践的な裏付けとして、APEXがインドネシアで取り組んできた、コミュニティ排水処理システムの例をあげ、それが包括的フレームワークとよく整合するものであることも述べました。最後に、インドネシアは、今、先進国になることをめざしていますが、これまでの先進国の発展の形を後追いすることなく、それとは異なる持続可能な発展の道を選択してほしい、一方、先進国は、大急ぎでその経済・社会・技術を持続可能なものに転換しなければならず、かつ開発途上国が持続可能な発展ができるように手助けする義務がある、と述べて、まとめとしました。

 

 続いて、昨年からインドネシア大学教授になられた、京都大学名誉教授の水野広祐氏から、「持続可能な未来へ向けてのインドネシアのオルターナティブな開発-小・中規模産業の役割」というテーマでご講演いただきました。田中が指摘した人間・労働疎外(Dehumanization)の問題は、日本などでは、公共圏(市場向け財サービスの生産を担う)が重視されるあまり、親密圏(再生産(子供を産み育てる)や使用価値としての財の生産を担う)がないがしろにされ、子育てや介護の負担が増し、少子高齢化が進む、といったアンバランスな問題にもつながっているというお話から始まりました。そして、インドネシアは、家内産業、小産業の活躍が著しく、その就業者数(製造部門)は、中・大規模産業の就業者数(同)を大きく上回り、家内・家族ビジネスの生産額が、実にGDPの三分の一にもおよぶというデータが示されました。そして、その活力は、地域の生産者と商人とのネットワーク、中古機器の活用や廃棄材料の再利用など、さまざまな協力とくふうを通して保たれているものであることが指摘されます。最後に、このような家内・小産業の活躍は、公共圏と親密圏のバランスを回復して調和をもたらし、インドネシアの長期にわたる持続可能な発展につながるものでもあるという見解が示されました。 

 

 三番目の講演として、バンドゥン工科大学環境研究センター長のチャンドラ・スティアディ教授から、「排水処理における環境調和型技術の展望:生物処理を中心に」というテーマで講演がありました。まず、インドネシアにとって慢性的な問題となっている水質汚濁は、いまだ改善のきざしが見えず、今後は水不足の問題も加わって、水の問題は今後のインドネシアにとって大きな課題となるという指摘がありました。課題の解決のための技術として、既存の先進国の技術は、エネルギー消費が大きく、大規模集中型であり、大量の汚泥が発生するなど問題が多く、そのまま開発途上国に移転すると持続的な運転がなされない、したがって、それぞれの地域に適した技術が開発される必要がある、として、嫌気性バッフルリアクターと下降流スポンジ懸垂リアクターの組み合わせ、膜分離をともなう曝気式バイオリアクター、太陽熱を利用して処理効率を高めたセプティックタンクなどの例があげられました。

 

 ついで、質疑に入り、インドネシアにおけるSDGsの達成度合いをどう見るか、家内・小規模産業の競争力の確保、開発途上国におけるSDGs達成のための技術と人材の確保、ソーラーセプティックタンクの費用、今日議論されたことを達成するためのパンデミック後の法律のあり方等に関する質問と議論がありました。私からは、インドネシアには、水野氏からも示されたような、家内産業・小産業の膨大な集積、親密で共生的なコミュニティの人間関係、豊かな自然と、類まれな生物多様性があるので、化石燃料の大量消費を前提とした巨大なシステムが出来上がってしまっている日本などより、持続可能な社会を構築するポテンシャルがはるかに高いこと、パンデミックや自然災害を含む、さまざまな不測の出来事に対する強靭さという観点からも、小規模分散型システムの構築が重要であることなどの意見を出しました。

 

https://www.youtube.com/watch?v=YfTUTulQXlc

 

 終了後も、包括的フレームワークの資料請求や、大学等での講演依頼が続き、相当にインパクトの大きかったセミナーであったことがわかります。本当は、元環境大臣で、APEXの25周年記念にもお招きしたエミール・サリムさん(現在、インドネシア大学教授)にもご講演いただくはずだったのですが、急病のため、この日は参加されませんでした。すみやかなご快復を祈ります。このようなすばらしい機会の設定にご尽力いただいた水野広祐さん、どうもありがとうございました。

ブラウィジャヤ大学で講演

「適正技術と代替社会」の本のインドネシア語版が出てから、機会ある毎に大学などで話させてもらっていますが、今回は、東ジャワ州のマラン市にあるブラウィジャヤ大学で講演させてもらいました。2015年12月14日のことです。日本ではそれほど知られていませんが、インドネシアでは有名な国立大学で、14学部に約60,000人が学んでいるそうです。先月SATREPS事業の研修に参加された、機械工学科のデニー先生からお招きを受けて、講演させてもらうことになったもの。
 お隣のマラン国立大学とキャンパスがつながっていますが、どちらも、広々とした、緑の多い敷地にきれいな校舎が立ち並ぶ、立派な大学でした。講義は機械工学科の大きな講義室でしたが、ずいぶんていねいに受け入れてもらい、わざわざ講義の横断幕までつくってくれたのです。
 参加者は主に学生でしたが、講師の方、研究者の方も含め、およそ50名の方が聞いてくれました。適正技術について、排水処理の実践、バイオマスエネルギー利用技術の開発、これからの技術のあり方などを話していきましたが、ついつい話が長くなり、2時間くらい話ました。終わりのほうで少しバテ気味になり、質疑の時間もなくなってしまったので、次からはもう少し時間配分も考えてくふうしなければと思いました。学生の人たちとやりとりする時間がとれなかったは少し残念でしたが、表情を見るかぎり、およそ半分くらいの人は、最後まで集中を切らさず聞いてくれた気がします。
 招待してくれたデニー先生は、牛の糞を原料にしたバイオガスの生産・利用や、マイクロ水力発電などのプロジェクトを手がけられているそうで、適正技術の話に多いに共感してくれました。これからも何かと連絡し合う関係になりそうです。

講義のようす

横断幕まで準備してくれました

コミュニティ排水処理システムの竣工式

今月は、中部ジャワ州テガール市のスレロックというコミュニティで、コミュニティ排水処理システムの竣工式がありました。2015年11月6日のことです。現在実施中のプロジェクトでは7基目、以前のプロジェクトの分も含めると9基目になります。テガール市では2基目です。
今回は、テガール市政府が地方政府予算で処理施設をつくり、私たちがJICAの資金で管渠をつくる、という分担でした。それぞれの家から最寄りの汚水枡へのつなぎ込みは、住民の負担です。
このスレロックの施設は、これまででもっとも手がかかったものです。特に地方政府が契約した処理施設の工事業者がきわめて劣悪で、確認すべきことをはなはだしく怠り、処理水槽の方向を東西逆に設置してしまい、配管の引き回しで対応する、という考えられないことまで起こりました。何の目的で何をつくっているのかという意識がまるでないので、配管の勾配が逆になったりもします。水槽の漏えいも茶飯事のように生じ、マンホールを開けるべきところをすべてコンリートで固めてしまう等々。ただ、先方ばかりを責めるわけにもいかず、私たちの管理も甘かったわけです。
それでもひとつひとつ対応して、やっとできたと思ったら、今度は夜陰に乗じて、回転円板を駆動するモーターや減速機が盗まれてしまうという事件がありました。せっかくコミュニティの人たちによろこんでもらおうと思ってやっているのに、そういうことをする心無い輩がいるわけです。モーターや減速機だけでなく、塩ビの配管まで切って持っていかれてしまったのにはまいりました。これらはもう新たに追加する以外にありませんでした。ポンプもよく故障するので、スクリーンを増強し、ポンプも故障しにくいタイプに替えと、抜本的な改善をしました。普通、ポンプから出た水は、流量を平滑化するために、かなりの部分がまたポンプ室へ戻ってぐるぐると循環するのですが、新たに考案した、循環しなくても流れを均すことができるショックアブソーバーというものも導入していて、これで電気の節約もできます。
そんなことをやっているうちに、本来は2014年の1月にできるはずだったものが、えんえんと延びて、ついに今月、竣工式を迎えたわけです。住民の人たちが、よく途中で投げ出さずについてきてくれたと思います。まだつなぎこんでいる家は44軒ですが、家の中のあらゆる排水をただシステムに流せばいいのは、やはり快適なようで、徐々に接続がふえていきそうです。インドネシアで普通に行われている嫌気性処理だけの施設と比べて、処理水質は格段にいいので、処理水で魚でも飼ってみたら、といっておきました。


ジャナバドラ大学で講演

バンドン工科大学、インドネシア大学に続いて、ジョクジャカルタのジャナバドラ大学(Universitas Janabadra)という大学で話をさせてもらいました。あまり有名な大学ではないのですが、1958年設立で、法学、経済学、工学、農学の4学部に約4,000人の学生を擁する、それなりの伝統と規模をもった大学だそうです。
今回は授業の形ではなく、工学部機械工学科の創立19周年記念の、再生可能エネルギーに関するセミナーにお招きを受けたもの。講師は、ジョクジャカルタ特別州エネルギー鉱物資源局担当部長のエディ・インドラジャヤ氏と、ジャナバドラ大学で小規模水力発電の研究をされているイスマント講師と、私の3名でした。
参加者は90〜100名くらいで、おおむねジャナバドラ大学の学生や研究者ですが、他の大学や企業の方なども多少参加されたようです。私は、『適正技術と代替社会』に書いた適正技術の今日的意味の話や、開発中のバイオマスの流動接触分解ガス化を例に、これからの世界に必要とされる技術をどのように開発していくか、という話をさせてもらいました。
おそらく、話の趣旨を一番よく受け止めてくれた方の一人は、私の次に講演したエネルギー鉱物資源局の方で、私は、これから必要とされる技術が備えるべき要素として、環境に負担をかけないこと(environmentally friendly), 再生可能であること(renewable), 人々がコントロールしやすいこと(controllable), 人々が参加しやすいこと(participatory)の4つをあげたのですが、その方のお話の中で、それを何回も引用してくれました。ジョクジャカルタ特別州でも、海沿いの地域に風車を設置するなど、再生可能エネルギーの導入に向けた動きが始まっているようです。
イスマントさんの小規模水力発電の話がおもしろく、通常、水力発電は、落差のあるところで行われるのですが、落差はないものの、ある程度の流速のある、平坦地を流れる川の水流を利用して発電するものです。それに適するように、水力を受け止める羽根の形や動きがくふうされています。APEXで取り組んでいるコミュニティ排水処理システムは川沿いの土地につくることも多いので、こういうもので発電して、それで回転円板を回せないか、などと考えるのは楽しいことでした。
質問では、バイオマスガス化の経済性や、運転上の問題など、よくあるタイプの質問が出ました。学生の受け止め方からすると、インドネシア大学やバンドン工科大学の時のほうがホットでした。また、機会があれば、他の大学等にも出かけてみたいと思います。

インドネシア大学で講演

『適正技術と代替社会』のインドネシア語版出版にちなんで、バンドン工科大学で講義ができたので、次はインドネシア大学かガジャ・マダ大学当たりで・・・と考えていたら、思いがけずインドネシア大学での講演が実現しました。

ただ、今回は大学のカリキュラムの中の講義という位置付けではなく、東工大の留学生・留学生OB・OGの方々が主催している、全国学生科学技術論文コンテスト的な催しの、有力候補者のプレゼンテーション〜受賞者表彰イベントのキーノートスピーチを頼まれたもの。その会場がインドネシア大学で、参加者もインドネシア大学の学生が6割くらいでした。

本番の三日くらい前から、そのイベントの関係らしいSMSが私の携帯に入り始めました。はじめは、申込み状況を知らせるために、イベントの事務局が送ってきているのかなと思ったのですが、そのうち、もしかするとこれは、私の携帯番号が、申込み先として間違ってアナウンスされているのではないかと思いあたりました。実行委員会に問い合わせると、実にそのとおりだったのです。訂正のアナウンスはしてもらったものの、時既に遅しで、その後も続々と申込みが入ってきます。しかたないので、メールを転送したり、「まだ間に合いますか」的な問い合わせに答えたり、受付の事務も手伝い始めました。そのうち、もう100人収容の会場が満杯だというので、今度は来るメール、来るメールにお断りの返信を出しました。断った数15〜20名ぐらい。ただ、本番では、申し込んで来なかった人もいたようで、70名くらいの参加でした。断った人たちに申し訳ないことをしました。

本番は8月22日の午前中でした。インドネシア大学は、ジャカルタとボゴールの中間のデポックというところにあり、キャンパスは広大で、構内に鉄道の駅もあるくらいです。私の講演・質疑は約2時間でしたが、熱心に集中して聞いてくれる人が多く、こちらとしてもやりがいがありました。今回もインドネシア語でやりました。私の議論は、やや極端にとられやすい面もあり、近代化批判が、いわゆる「途上国」の人たちの反発を招くかもしれないのですが、参加者の顔色や彼らとのやりとりからして、おおむね受け入れられたようです。

質問もたくさんでましたが、今回は技術的な質問以外に、「企業はプロフィットをあげなければいけないが、『参加型の技術』とプロフィットをあげることは両立できるのか?」、「なぜインドネシアをフィールドとしているか、インドネシアは適正技術開発に適しているのか」、「適正技術開発を進めていくためにはどうすればいいか」、「原子力技術に可能性はあるか」、「どういう技術分野に取り組めばいいか」等、本質をついた質問や、自分たちも適正技術開発に取り組みたいという意思を前提にした質問が多く、かなり深いところまで理解してくれたと感じました。

そういう意思を持つ若い人たちをどうやって支援していくのか、こちらも大きな宿題をもらった気がします。