適正技術の国際会議を終えて−その2

 (ひとつ前のブログからの続きです)そのように無事、会議が始まって、エミール・サリムさんのご講演、植田和弘先生のご講演…と、進んでいきました。エミール・サリムさんとは、会議に先立ってジャカルタで打ち合わせしたのですが、超多忙な中、会議の趣旨とかみあうように講演内容を考えてくれたと思います。植田先生のお話では、原発に関する一歩踏み込んだご見解が聞けたのが印象的でした。
 みんなでお弁当を食べて午後に入り、外務省の田村政美さん、アントン・スジャルウォ、西岡秀三さんと講演が続きます。田村さんのご講演で、外務省が進めている東アジア低炭素成長ネットワークについての話が出ましたが、このネットワーク形成には西岡さんがコーディネーターとして活躍されているというつながりがあります。そのような場に、まさにNGOもコミットし、現場的立場からインプットしていくべきではないかと感じられ、そのような発言もしてみました。アントンの講演は、私と考えや内容が近いものでした。ウォーターピラミッドという、太陽熱を利用した海水淡水化装置の話が出てきましたが、円錐状の白い装置が二つ並んでいるさまを、アントンは「まるでブラみたいだ」と冗談をいったのです。それにエミール・サリムの奥さんが敏感に反応し、日本人の参加者にはあまり通じなかったようなのがおもしろかったです。
 私の講演は、「適正技術と代替社会」の本で論じたところと重なるものですが、今回の会議の発表資料をまとめる中で、さらに整理されていった点がいくつかあります。ひとつは、リニアな近代的発展史観がくずれはじめたことと、適正技術が今日的な意義を持つものとして浮上してきたこととの間の重要な関係です。もうひとつは、適正技術を創出していく際に、それぞれの地域にある条件の中で、近代科学技術の中の素材的要素をどうやって生かしていくか、ということが大事になってきます。その際、この両者をいかにくふうしてつなげていくか、という意味で<接合>という概念が有用なのではないかと思いあたったことです。
 それらを受けて、村井吉敬さんを座長とする約1時間のシンポジウムがありました。村井さんの、各講師や会場の参加者からの話の引き出し方がすぐれていて、とてもいい流れのシンポジウムになったと思います。
 これらの講演やシンポジウムの内容については、近々APEX通信(会員向け)にまとめられることになっています。(続く)