分散型排水処理の国際会議に参加して

 3月22日から25日まで、東ジャワのスラバヤで開催された、開発途上国での分散型排水処理に関する国際会議に参加しました(会議自体は26日まで)。IWA(International Water Association)と、BORDAというドイツのNGOの主催で、”Decentralized Wastewater Treatment Solutions in Developing Countries Conference and Exhibition”というのが会議の正式名称です。大規模集中型の下水道でもなく、戸別処理でもなく、その中間のコミュニティレベルの衛生改善システムを推し進めようというのが会議の趣旨です。技術的観点からだけでなく、住民参加、キャパシティ・ビルディングなど社会経済的観点からも問題が論じられ、約30本の発表と全体会議がありました。インドネシアでの会議なので、参加者もインドネシア国内からが大半だろうと思って出かけたのですが、3分の2くらいは外国人で、東南アジア、南アジア、中国、中東、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカなど、ずいぶんいろいろな国から約200人が参加。
 最近のインドネシアの状況を見ていると、経済発展と都市への人口集中とともにますます水質汚濁は深刻になっているのですが、その対策がなかなか進みません。大規模集中型の下水道でカバーされている人口はまだ数%に過ぎず、それは巨大な投資と長い建設期間が必要なやり方なので、近い将来に画期的に普及が進むとは考えづらいです。かといって、セプティック・タンクのような戸別処理は、人口の集中した都市部では地下水汚染をもたらし、設置するスペースも限られているので、それも有効な解決にはならないと思われます。したがって、ある程度の規模で排水を集めて処理する分散型排水処理が、現実的な対策としてクローズアップされてくるのは理由のあることです。もっともそれは生活排水の話で、産業排水については、それぞれの発生源で個別に処理することが原則であるのはいうまでもありません。
この分散型排水処理は、まさにAPEXとディアン・デサで取り組んできた仕事とも重なるので、私も、ジョクジャカルタのコミュニティ排水処理のプロジェクトについて発表しました。コミュニティをベースとした分散型排水処理はインドネシアではSANIMAS(Sanitasi Masyarakat)と呼ばれていますが、政府の方針としても、これからSANIMASを強力に推進していく流れのようです。BAPPENAS(国家開発計画庁)の方の講演では、これまでの5年間でSANIMASは180,000人をカバーしたので、今後の5年間ではこれを1800万人としたい、というずいぶん意欲的な展望も語られました。そのように進んでほしいですが、ただ、これまでのところ分散型処理のほとんどすべてのプロジェクトがBORDAの技術を採用していて、彼らのやり方はおよそ嫌気性処理だけなので、水質の問題が気になります。嫌気性処理だけだと、処理水の水質が、なかなか安心して放流できるようなレベルにはならないからです。このまま進んでしまうと、今度はSANIMASからの処理水が汚染源として問題になってくる事態もありえます。PUSTEKLIM(排水処理適正技術センター)で進めてきたような、嫌気性処理と好気性処理の組み合わせのがいいのではないかと思い、質疑の時にそういう発言も何回かしてみました。この会議でいろいろな人と話をする中で、インドネシアでは、好気性処理はコストが高い、電気代が嵩む、運転もむずかしい、という固定観念が定着していることも感じました。APEXで取り組んできたプロセスは、嫌気性処理を前段に置くことで好気性処理の部分をできるだけ圧縮してコストを抑えること、好気性処理そのものとしてもエネルギー消費が少なく運転も容易な技術を選ぶことを特徴としていて、そのような観念をある程度破れるのではないかと思いました。せっかくジョクジャカルタにコミュニティ排水処理の具体的モデルもつくったので、それをしっかりアピールして、広めていくことに努力したいです。

(4/21 追記)発表資料を以下のURLに掲載しました。
http://www.apex-ngo.org/Full_Paper_for_DEWATS_Conference.pdf