カリウラン通りを渡る

 毎月ジャワ島中部のジョクジャカルタと日本を往復しながら仕事しているのですが、ジョクジャカルタの住まいとしては、事務所の近くの民家の二階を間借りしています。そこから事務所まで歩いて15分くらいの距離です。
通勤路はおよそおだやかな住宅街で、木立に囲まれて、ぜいたくではないものの小ぎれいな家がならんでいます。前庭の木陰にお茶の飲めるテラスをつくったり、扉の上に西部劇のカウボーイ風の飾りをつけて、その前にサボテンを植えてあったり、庭に東屋風の竹の小屋を配したりと、家がそれぞれ趣向をこらしてつくられていて、みなさん生活を楽しんでいるように見えます。知らない人でも、目が合ってちょっと会釈すると、たいていニッコリと笑いかえしてくれます。緑は多いし、あまりエネルギーを使っているように見えないので、あえて省エネとか持続可能とかいわなくとも、およそこういう風に暮らしていればいいのではないか、都会的に電化され、買い物の多い生活にしないで、こういう暮らしを保つのが大事なのではないか、と思ったりします。
 ただ一ヶ所神経を使う場所があります。カリウラン通りという、交通量の多い通りで、そこを渡らないと事務所へ行けないのです。いわば、そこが「近代」なのです。特に朝の時間帯は往来が激しくて、車もさることながら、オートバイがビュンビュン飛ばして来ます。信号がとても少ないので、あまり車間距離が大きくあくことがありません。手前の車線に少し空きが出て半分渡れても、反対車線が混んでいると道路の真ん中で立ち往生してしまうことになります。それはさけたいので、手前の車線も向こう側も空くのを待っていると、いつまでたっても渡れません。信号は、1km以上も南のリングロードまで下らないとないし、どこかに横断歩道があったと記憶していますが、もう線が薄くなって見えなくなっています。
 ただ、繰り返し渡っているうちに、車とオートバイの流れの中にスキを見つけて、タイミングをはかるのがうまくなってきて、それほど苦もなく渡れるようにはなりました。昔は運動部だったので、少し横にスライドしながら渡るとか、運動神経と技も磨いています。でも、平然と、ゆうゆうと渡る現地の人たちの域にはまだ達していません。そのように、慣れてしまえば、とりあえずは現状のままでも済んでしまうので、なかなか対策がとられない、ということがあると思います。それは排水処理がなかなか行われないのとも通ずるところがありそうです。
しかし、やはりこういう状態は何とかしてほしいです。当面は、信号と横断歩道の整備でしょうか。やがては、もっと車とオートバイの数が減り、かつ、もっとゆっくり走って、この通りも、先の住宅街にマッチした、おだやかな雰囲気の通りになるといいのに、などと思いながら、事務所にたどりつきます。


西部劇風にコーディネートされた家


朝のカリウラン通り